ケアマネジャー(介護支援専門員)の仕事には「シャドーワーク」と呼ばれる、正式な業務として認識されていない追加的な作業が含まれます。
本記事では、ケアマネジャーが抱えるシャドーワークの具体例や、それをうまく断る方法、対策について解説します。
シャドーワークの負担を減らし、効率的に働くためのポイントを詳しく見ていきましょう。
シャドーワークとは何か?
シャドーワークとは、正式な業務として認識されていないものの、日常的に行われている追加的な作業を指します。ケアマネジャーが行う非公式なサポートや相談がこれに含まれます。
利用者やその家族との信頼関係を築くために必要な活動であり、本来の業務を補完する役割を果たすことがあります。例えば、夜間に利用者の家族からの相談電話に応じることなどが挙げられます。
相談内容は健康状態や介護に関する不安などが多く、心理的なサポートを提供することもシャドーワークに含まれます。
しかし、過度なシャドーワークはケアマネ自身の疲労を引き起こし、本来の業務に支障をきたす原因になります。長期的にはストレスやバーンアウト(burnout)のリスクが増加し、チーム全体の業務効率にも悪影響を及ぼすことがあります。そのため、業務の明確化と役割の再確認が必要です。
シャドーワークの具体例
利用者の家族からの相談(夜間や休日も含む)
- 夜間に家族から、お母さんの様子が変だという相談が入ること
- ケータイも家の電話も繋がらず、コードを抜いていないか見てほしいという依頼
ケアプランに含まれないが頼まれる支援の手配
- 利用者から自宅の修理を手伝ってくれる業者を探してほしいという要望
- 雪かきの業者を探してほしいという依頼
ケアプランに直接関係のない問題の解決
- 利用者の金銭管理に関するトラブルの相談、どう対処すべきかアドバイスを求められること
- ケータイ電話が使えなくなったので見てほしいという依頼
- 息子から届いた壁掛けのお札をどこに掛けるべきか相談されること
利用者や家族からの緊急ではない相談ごとへの対応
- 休日に次の訪問日についての質問が家族から送られてくること
- 県外の家族から、ガスコンロがつかないので見てきてほしいと言われること
家族同士のトラブルに対するアドバイスや仲介
- 利用者の家族同士で意見が対立している際に、ケアマネが仲裁役としてアドバイスを求められること
- 対立する家族それぞれから要望を受けること
これらの作業は正式な業務として見られていないため、業務量の管理が難しく、時間的な負担が増えることが多いです。特に夜間や休日の対応は、私生活とのバランスが崩れ、精神的な負担を増やす原因になります。
シャドーワークを断ることの重要性
シャドーワークを全て引き受けると、本来の業務であるケアプランの作成や利用者への支援に十分な時間を割けず、結果的にケアの質が低下する恐れがあります。また、仕事量が増えすぎることで自身の健康を損なうリスクも高まります。そのため、適切に断ることが重要です。
特に業務時間外の対応を求められる場合、自分の健康や生活リズムを守るために断るスキルが必要です。シャドーワークを適切に断ることで、自分の業務の質を保ち、本来注力すべきケアプランの作成や利用者への直接支援に集中できます。断るべき時にはしっかりと断ることが、最終的に利用者にとっても良い結果をもたらします。
シャドーワークの断り方のポイント
対応時間を明確に伝える
- 「対応できるのは平日9時から18時までです」と伝え、対応可能な時間を明確にすること
- 対応時間を伝えることで、相手も無理な要求を控えるようになり、負担が軽減される
感謝の気持ちを込めて断る
- 「ご相談いただきありがとうございます。ただ、業務外の時間ですので対応が難しいです」と感謝を示しながら断ること
- 感謝の言葉を添えることで断り方が柔らかくなり、相手も納得しやすくなる
他の支援方法を提案する
- 市役所の相談窓口にお問い合わせいただくよう代替案を提案すること
- 地域のボランティア団体や他の専門窓口を紹介し、自分だけに負担が集中しないようにする
シャドーワークが生まれる理由
シャドーワークが発生する背景には、利用者やその家族からの「頼みやすさ」があります。ケアマネジャーは信頼されているからこそ、多くの相談や頼みごとが寄せられますが、その結果として業務外の負担が増え、業務全体に支障をきたすことがあります。
利用者や家族にとって、ケアマネジャーは頼りにできる存在であり、つい何でも相談してしまいます。しかし、それがシャドーワークの原因となり、ケアマネジャーに業務外の負担をかけてしまうのです。特に、相談内容が本来のケアプランに含まれない場合でも、断りにくいことがあります。
頼みやすさがもたらす影響
信頼関係からくる相談の増加
- 利用者や家族にとって、ケアマネは非常に頼りになる存在であるため、業務時間外の相談が増えること
- 信頼されることは良いことだが、それが過度な負担となる場合がある
業務範囲の理解不足
- 利用者側がケアマネの業務範囲を理解していないことが原因
- 例:医療行為を行うことはできないにもかかわらず、医療的な対応を求められることや、ケアプランに含まれない日常的な問題解決を依頼されること
- 業務範囲を明確に伝えることで、シャドーワークを減らすことが可能
シャドーワークへの対策方法
シャドーワークをうまく管理するためには、その作業が「必要な業務かどうか」を自分で判断することが大切です。そして、断るべき場合には相手を傷つけないように断るスキルが求められます。
シャドーワークを減らすためには、日々の業務を見直し、どのような作業に時間を使っているのかを把握することが必要です。そして、必要でない作業や業務外の依頼については、しっかりと断ることを意識しましょう。
シャドーワーク対策の具体例
仕事の内容を見直す
- 毎日の仕事をリスト化し、シャドーワークに該当するものを洗い出すこと
- 上司や同僚と相談し、業務範囲を明確にすること
- どの作業が業務外であるかをリストアップし、チーム全員で共有し理解を深めること
自分の限界を知る
- 全ての相談や依頼に応じることは不可能
- 自分の体調や精神的な余裕を考え、無理のない範囲で対応すること
- 例:過労で体調を崩した際に、上司と相談して対応時間を見直し、業務外の対応を減らして健康を取り戻すことができた
- 毎日の睡眠時間を確保し、ストレスを感じたときには短い休憩を取ることも有効
業務範囲を明確に説明する
- 利用者や家族に対して、ケアマネジャーの業務範囲を明確に伝え、シャドーワークの発生を防ぐこと
- 「ここからは他のサービスが担当する部分です」と明確に伝え、相手の理解を得やすくすること
周囲からのサポートを得る方法
シャドーワークを減らすには、周囲の理解とサポートが欠かせません。他の職種や上司とのコミュニケーションを図り、業務範囲や負担を共有することが効果的です。
シャドーワークを一人で抱え込まず、チーム全体で負担を共有することで、より効率的に働けます。そのためには、他職種との連携が重要です。
チームでの協力体制の構築
業務の共有と相談
- 他職種やチームメンバーと業務内容を共有し、相談することで負担軽減
- 定期的にミーティングを開き、業務の進行状況や負担について話し合い、お互いにサポートし合える環境づくり
上司への報告と相談
- シャドーワークが業務に支障をきたしている場合、上司に報告し、対応方法を相談すること
- 上司からの指示を仰ぎ、一人で悩まず、より良い対策を見つけること
他職種との連携を深める
- 医師や看護師、介護スタッフなど他の専門職と情報を共有し、必要に応じて役割を分担することで、ケアマネジャーの負担を減らすことができます。
- 例:医療に関することは医師に任せるなど、適切な役割分担を行うことが重要です。
まとめ
ケアマネジャーのシャドーワークは、多くのケアマネが直面する課題です。断るのに抵抗があるかもしれませんが、自分の健康や本来の仕事を守るためには、適切に対応することが大切です。
業務の範囲を明確にし、周りと協力しながら、無理なく業務を進めることが重要です。
シャドーワークを減らすためには、自分の業務内容を見直し、必要でない作業を断る勇気を持つことが必要です。また、周囲からのサポートを得て、チームで協力しながら働くことで、自分の負担を軽減し、より良いケアを提供することができます。
自分の健康を守りながら、利用者にとって最善の支援を行うために、シャドーワークの管理はとても重要です。